先日の台北旅行の際に、ふと「これだけ頻繁に台湾に旅行するのだから、台湾でもHSBC口座を作ってみよう」と思い立ちました。
香港でHSBCのプレミア口座を持っていれば、シンガポールやイギリスなど世界中の支店で比較的スムーズに口座を開設できるというのは、ある種の常識です。
ならば台湾でも——と思い、軽い気持ちで台北市内のHSBC支店を訪れてみたのです。

入口を入ろうとしたらガードマンっぽい男性が用件を聞いてきました。妻が普通話で「口座開設したい」と伝えると、こちらが日本人だとわかったようで、丁寧な日本語で対応してくれました。
ただ、返ってきた答えは意外なものでした。
「大変申し訳ありませんが、台湾IDをお持ちでない方にはHSBC台湾で口座開設はできません。」
なんと、非居住者は台湾口座を作れないというのです。
実質の門前払いなのですが、その理由を日本語でとても丁寧に説明してくださり、ちょっと恐縮してしまいました(笑)
香港に戻って調べてみたら…
このことが少し気になって、香港に戻ったあとでHSBC香港のサイトや関連資料を改めて確認してみました。
すると、どうやらこれは単なるHSBCのルールではなく、台湾ドルという通貨そのものの“性格”に理由があるようです。
台湾ドルは「自由通貨」ではない
台湾ドル(TWD)は、国際的な為替市場でも一応取引されている通貨ですが、資本移動には一定の制限がかけられています。
つまり、台湾当局が為替相場や資本流出入を監視・管理している「外為管理対象通貨」にあたります。
これは、
- 投機的な動きを避ける
- 為替の安定性を保つ
- マネーロンダリングを防止する
といった目的によるものです。
そのため、台湾国外でTWD建ての銀行口座を開くことは基本的に認められていません。
私がHSBC台北支店で断られたのも、こうした背景に基づくものでした。
HSBC香港のマルチカレンシー口座にTWDが含まれない理由
HSBC香港のプレミア口座では「マルチカレンシー口座」が提供されており、次のような通貨が含まれています:
- 香港ドル(HKD)
- 米ドル(USD)
- 日本円(JPY)
- ユーロ(EUR)
- 英ポンド(GBP)
- 人民元(CNY)
- 豪ドル(AUD)
- カナダドル(CAD) など
これらはいずれも、国際送金・貿易・資産運用に使われる“自由通貨”です。
TWDのように「管理のある通貨」は、グローバルな口座商品には馴染まないというわけです。
台湾ドルと同様な通貨もある
ちなみに、台湾ドルと同様に「海外での保有や送金に制限がある通貨」には次のようなものがあります:
- インドルピー(INR)
- 韓国ウォン(KRW)
- 中国人民元(CNY)※オンショアの場合
- ブラジル・レアル(BRL) など
いずれも、為替市場では取引されていても、海外で自由に口座を開いたり資産を保有するのは難しい通貨です。
HSBCやシティバンクなどの国際銀行でも、こうした通貨はマルチカレンシー口座には含めていないのが一般的です。
「通貨の自由度」は国家の考え方を映す鏡
同じように見える「通貨」でも、国や地域によってその性質や自由度はまったく異なります。
今回の台湾ドルの件は、「口座を作ろう」と思っただけの話が、意外と深い“通貨の壁”にぶつかるきっかけになりました。
香港から世界を眺めていると、見えてくるのは“お金の自由”と“国家の姿勢”のせめぎ合いだったりもします。