Fragment
ひとまず、さよなら花の北
私がまだ高校生の頃だっただろうか、野里駅にほど近いその場所にニチイという大きなスーパーがオープンし、同じ頃に花の北モールというのもあった気がするが数十年前のことでもう定かでなく、ともかく姫路の駅前まで出るより家からずっと近かったその店は、時とともにイオン花の北店となり、赤みがかったピンクの屋根もいつしか色褪せ、通路を行き交う人の姿もめっきりまばらになっていたのだが、そのイオンがこの二〇二六年八月末をもって、建て替えのための休業でひとまずその幕を下ろし、次に扉が開くのは何年か先になるというので、友人夫婦と連れ立って三人でその閉店セールに足を運び、ふと屋上の駐車場へ上がってみると、色の抜けかけたピンクの案内看板の「くるま」の「く」の字、その脇の隙間の向こうに白鷺城が浮かんで見え、慌てて三脚を据え、SL2-Sに二百ミリ、そこにダブラーを噛ませた四百ミリ相当で狙えば、望遠らしい圧縮の効いた夏の霞の中に、天守と、その麓のマンションと、看板のピンクとが、不思議な取り合わせのまま一枚に収まってくれて——この場所からこの構図は、もう二度と撮れないのかもしれないと思いながら、私は静かにシャッターを切った。
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