Fragment
血圧の警告と、ヨーグルトを育てる夏
七月から母が全面介護の施設に入居し、日本にいる間の私はすっかり一人暮らしになったのだが、その母の通院に付き添ったついでに自分も診てもらったら、血圧がなんと一八〇〜二〇〇もあって医者に「あなたのほうが危ないよ」と苦笑され、それで薬を処方してもらい、塩を控え、一日三十分は歩くよう心がけ始めたのだけれど、外食はうまくてもどうしても味が濃く塩が多いという当たり前のことをこの年になってようやく身をもって知り、料理が得意でもないのにエアフライヤーの類まで買い込んでは塩に頼らぬ工夫を凝らすうち、友人に勧められて始めたヨーグルト作りがこれがなかなか楽しく、日本なら明治の「おいしい牛乳」二七〇円ほどで、少し高いと思いつつギリシャ系のパルテノや抵抗力がつくというR-1を培養すると、買っていたものより格段にうまいのは牛乳のおかげだろうと思い、香港でも続けたくてタオバオでそこそこ人気のヨーグルトメーカーを一〇一元・二千数百円——日本製が一万五千円だったのを思えば破格で——手に入れたはいいが、今度は逆に香港では材料のほうが高く、あれこれ調べて選んだ明治の赤いパッケージ一リットル弱の濃厚なミルクはいいとして、肝心の種菌はパルテノもR-1も日系スーパーでも探さねば手に入らず高い、どうしたものかと思っていたら、この二千円ほどのOIDIRE——私にはどうしても「オイボレ」と読めてしまう——に乳酸菌のおまけが十回分(一袋十グラム)ついてきて、まずはこの十袋でミルクを育てることにし、一回で一リットル近くできるのを二日ほどかけて朝昼晩といただいている、そんな日々で、九月の頭にはまた日本へ帰り「おいしい牛乳」でR-1かパルテノを育てたいし、次の帰省は妻も一緒だが乳製品の得意でない彼女に食事は任せ、ヨーグルトは私の趣味として作ろうと思っていて、薬のおかげで血圧はぐんぐん下がっていまや一二〇を切るほど、やめるわけにはいかないがそこそこ落ち着いてきたのだから、これからは少しくらい味わって食べてもいいかな、と思っているこの頃である。