長年憧れていたカッパドキア。まだ暗い空に浮かぶ無数の熱気球、妖精の煙突と呼ばれる奇岩群、そして地下深くに広がる古代都市。この大地は、想像をはるかに超えた風景を見せてくれた。

カッパドキアの日の出

朝日に染まる奇岩群と気球の絶景

念願の熱気球体験

早朝5:40、気温2℃。真っ暗な中、ホテル前に送迎バンが到着する。これから始まる熱気球体験への期待感で、寒さなど気にならない。

現地に着くと、まだ暗い広い野原に横たわった気球が何機も並んでいた。バーナーの炎が夜空を照らし、地面に寝かされていた気球が徐々に膨らんでいく。その様子は圧巻だった。

ゴンドラに乗り込むと、気球はゆっくりと上昇を開始。日の出の頃には想像以上の高さまで上がっていた。そしてついに、念願だったカッパドキアの気球からの日の出。

気球の準備 バーナーの炎

気球は上下左右に移動しながら、常に360度回転している。このため、全ての景色が自然と目の前を通り過ぎていく。太陽が後ろにあっても、数分後には正面に来る。写真撮影も慌てる必要がない。

カッパドキアの奇岩群と朝日、そして周囲を飛ぶ数十機の気球。まさに絶景だった。長年のバケットリストの一つが、これほど素晴らしい形で達成できた。最後はノンアルコールのシャンパンで乾杯。最高の朝だった。

気球からの眺望

空から見下ろすカッパドキアの奇岩群

ドローンが映した絶景

翌朝、時差ボケで午前3時には目が冴えていた。ホテルのベランダでドローンを飛ばす。まだ薄暗い空に、次々と浮かび上がる色とりどりの熱気球たち。

撮影に没頭していると、心配した妻が様子を見に来た。ドローニーで二人の記念動画を撮っているとき、驚くべき事実に気づく。なんと我々が泊まっているホテルは、カッパドキアの象徴とも言える奇岩群の絶景ポイントに位置していたのだ。

ドローンで撮影した朝のカッパドキア

ドローンがホテルから離れれば離れるほど、その光景は圧巻のものとなっていく。朝日に照らされた奇岩群の中に佇むホテル。信じられないほどの美しさだった。

ドローンからの俯瞰

ドローンが捉えた奇岩群とホテル

地上から巡る奇岩群

空から一望した絶景を、今度は地上から詳しく見学していく。最初の目的地はウチヒサル。トルコ語で「尖った砦」を意味する名前の通り、巨大な岩山を要塞として活用してきた。

城塞の壁面には、多くの小さな穴が開いている。これらは「鳩の家」と呼ばれ、鳩の糞をブドウ畑の肥料として活用していた。鳩が赤色を好む習性を利用して、巣の入口を赤く塗って鳩を呼び寄せていたという。当時の人々の知恵だ。

ウチヒサル城塞 鳩の家

ユルギュップ近郊には、「三姉妹」と呼ばれる3本のキノコ状の岩がある。軟らかい凝灰岩が円錐形に削られ、上層の硬質な地層が残ったため、まるで帽子を被ったような形になっている。「妖精の煙突」という愛称でも親しまれている。

三姉妹の岩

妖精の煙突と呼ばれる三姉妹の岩

次に訪れたのは、デヴレントの谷にあるラクダ岩。「イマジネーションの谷」「ピンクの谷」とも呼ばれるこの場所で、ラクダの形が驚くほど明確な岩に出会う。それぞれの岩の形状に物語を見出す楽しさ。カッパドキアならではの魅力だ。

ラクダ岩

デヴレントの谷のラクダ岩

地下都市カルダックの叡智

地下深くに張り巡らされた空間。カッパドキアの地下都市は、古代の人々の知恵と工夫の結晶だ。

紀元前8-7世紀頃、フリギア人によって建設が始まったとされる。その後、様々な文明によって拡張され、ビザンチン帝国時代には、迫害を逃れるキリスト教徒たちの避難所として発展した。地下都市によっては8フロアにも及ぶ。

地下都市の入口

カルダック地下都市の外観

換気システム、生活空間、貯蔵施設、防衛設備。驚くべき精巧さで配置されている。掘り出された膨大な土や岩をどう処理したのか。現代でも解明されていない技術的な謎が残されている。

地下都市通路 石の扉 換気口

特に印象的だったのは、円盤状の石板による防衛システム。直径約1.5メートルの石板が、各階層の入り口に配置されている。内側からのみ動かすことができ、中央部の小さな穴から敵の様子を窺ったり、槍で攻撃したりすることが可能だった。

また、鳩を引き入れ糞をブドウ育成の肥料として活用する工夫。限られた空間を最大限に活用する知恵が随所に見られる。古代の人々の驚くべき叡智を今に伝える、貴重な遺産だ。

地下都市内部

何層にも重なる地下都市の空間

Cappadocia Cave Resort & Spa

宿泊はCappadocia Cave Resort & Spa。カッパドキアでは規模の大きなホテルで、洞窟をイメージした造りながらも、バスタブまで完備された快適な空間だった。

ホテルの真骨頂は、その立地にあった。ドローン撮影で初めて気づいたのだが、奇岩群の絶景ポイントに位置していたのだ。ベランダから眺める朝の熱気球。夢のような時間だった。

ホテル外観 客室 ベランダからの眺め
幻想的な大地カッパドキアに別れを告げる。次の目的地はコンヤ。イスラム神秘主義の中心地で、旋回舞踊セマーが待っている。